会計ソフト大手のfreeeは11月1日、新たに販売管理領域に参入し販売管理サービス「freee販売」の提供を同日より開始すると発表した。同サービスはクラウド型で提供され、同社のクラウド会計ソフト「freee会計」と連携しており、2023年10月から始まるインボイス制度の適格請求書フォーマットにも対応している。同社によるとクラウド会計ソフトと一体型で使える販売管理サービスの提供は国内初という。

    販売管理サービス「freee販売」サービス概要

同日開かれた会見に登壇したfreee販売 開発責任者の佐藤顕範氏は、「これまで支援してきたバックオフィス業務の効率化に加え、案件の見積り、請求書の発行や回収といったフロントオフィス業務の効率化と収益性と収益機会の可視化も進めていく」と説明した。

    freee販売 開発責任者の佐藤顕範氏

販売管理とは? 約76%が「紙・Excel」

そもそも販売管理とは、取引先(顧客と仕入先)とのやり取りで「お金」と「モノ・サービス」の流れを管理すること。具体的には、「何を・誰に・いつ・どこで・いくつ・いくらで」販売したのか、また請求や代金の回収は済んでいるのかなどを管理する。問い合わせから請求まで、一連の流れの合間に、記録や見積書・請求書の作成をする作業を指す。

    「販売管理」とは

freeeの調べによると、販売管理を紙・Excelで行っている小規模事業者は約76%いるといい、これらの企業は「入力・転記作業の負担」や「請求漏れ・支払い漏れ」といった課題を抱えているという。Excelで作成した粗利管理表を部署内で共有して管理している場合、他の誰かがファイルを開いているときは記入できなかったり、誰かの上書き保存でデータが消えてしまうといったことも考えられる。

また、紙やExcelで管理することにより、収支実績や粗利率が分からず、受注した案件を納品してから人権コストや仕入価格を整理し原価を洗い出してみると実は赤字で請け負っていたケースなども多々あるとのこと。「忙しい営業の方にとって請求書の発行や支払いの確認といった業務は優先順位が上がりにくい作業で、さまざまなトラブルを引き起こす可能性が大いにある」(佐藤氏)

    販売管理を紙・Excelで行っている小規模事業者は約76%。従来の販売管理における課題

「freee販売」の3つの特徴

今回、同社が提供を開始する「freee販売」はこれらの課題を解決するために開発された。まず同サービスには、入金・支払い期日を自動で管理する機能がある。最低限の入力のみで転記作業が一切不要になるといい、見積書や請求書を作成することで自動で入金・支払いの期日を管理画面上で表示できる。

    転記作業が不要。入金・支払い期日も自動で管理

「見積書や請求書を送っているかどうかのステータスも一目で確認できるため、記入漏れや記入ミスの防止につながる。メールの件名や本文も自動で反映され確認作業の負担も軽減される」(佐藤氏)

    請求書管理画面イメージ

また、入力したデータから損益データを自動収集し見やすいグラフを生成する機能もある。複雑な関数やグラフ作成を行わなくても、案件単位で損益を把握することが可能とのこと。

佐藤氏は、「営業の方が通常通り業務を回すことで、期日の管理ができて、経理も終わり、収支実績も簡単に可視化できる。業務の手間の削減と経営のアクションにつなぐことができる」と、同機能の特徴を説明した。

    関数・グラフ作成不要。自動で売上・利益を可視化

さらに、freee会計とデータ連携できる点も大きな特徴だ。会計仕訳の登録や、請求・入金状況の確認をリアルタイムで行うことが可能。freee会計・freee販売それぞれの管理画面から1クリックで遷移することができ、案件ごとにさかのぼりたい情報にすぐにアクセスできるといった利点がある。

「取引先のマスタが完全に1つになっている。会計ソフトのマスタを同期させたり、Excelファイルでインポートしたりする手間がなくなる」(佐藤氏)

    freee会計とデータ連携

約80%の工数削減に成功、インボイス制度にも対応

同社の比較調査によると、Excelで書類作成した場合年間480時間の工数が発生するのに対して、freee販売を利用した場合年間384時間の工数削減(約80%減)が実現できたとしている。

また同サービスは、2023年10月から始まるインボイス制度に向けて対応が必要となった「税率ごとの消費税額および適用税率」および「適格請求書発行事業者の登録番号」の項目にも対応している。「インボイス制度の内容を知らない人でも、自動的に適格請求書の仕様に沿った請求書を発行することができる」(佐藤氏)

    インボイス制度にも対応

同サービスのテスト版を利用したカフェ運営事業などを手掛けるColereの担当者からは、「会計ソフトと連動しているので『出ていくお金』と『入ってくるお金』を一元管理できるのは便利。また直感的なUIによりカフェのアルバイトの人も簡単に操作できた」と好評だったという。

同サービスの提供価格については、基本料金として月額980円(税別)、1人あたりのID料金として月額200円(同)かかる。なお、同社はサービスリリースを記念し、1年目はユーザー追加が何名でも無料になるキャンペーンを実施するとのこと。2023年4月末までに年間プランを契約した企業が対象だ。

    リリースキャンペーン「1年目はユーザー追加が何名でも無料」

同社は「freee販売」の最初のターゲットとして、WebサービスやIT、コンサルティング事業などの無形商材を扱う企業を想定する。今後、在庫管理機能、見やすさ使いやすさを重視したわかりやすいグラフ表示機能、稟議承認機能なども追加する予定。有形商材の事業者や大企業向けの販売管理に必要な機能を早急に開発していく考えだ。

    開発予定の機能

「誰でも経営状況の可視化ができ、判断に自信が持てるような世界を目指していく」(佐藤氏)