スケールの異なるデータを1つのグラフで示すときは、縦軸の一部を「波線」で省略したグラフを作成するのが一般的だ。ただし、こういったグラフの作成は意外と難しく、さまざまなテクニックを組み合わせながら工夫を凝らしていく必要がある。ということで、今回は「波線」で省略したグラフの作成手順を紹介していこう。

一部のデータだけが突出したグラフ

今回は、ある施設の入場者数を月別にまとめたデータを使って操作手順を解説していこう。このデータをもとに「集合縦棒」のグラフを作成すると、以下の図のような結果が得られる。

    「7月」と「8月」のデータだけが突出した棒グラフ

「7月」と「8月」のデータが他の月に比べて格段に大きいため、そのグラフも「7月」と「8月」だけが突出したグラフになる。このままでは各月のデータを読み取りづらいし、「適切なグラフ」とは言い難い状況になる。

このような場合は、縦軸の一部を「波線」で省略したグラフに加工するのが一般的だ。たとえば、縦軸の5,000~22,000の範囲を「波線」で省略すると、以下の図のようなグラフに仕上げることができる。

    波線で省略した棒グラフ

このようなグラフを手軽に作成できればよいが、残念ながらExcelには「縦軸の一部を省略する機能」が用意されていない。よって、さまざまなテクニックを駆使しながらグラフを加工していく必要がある。今回は、その手順を詳しく紹介していこう。

第2軸を活用したグラフのカスタマイズ

縦軸の一部を「波線」で省略するための第1ステップは、突出したデータを「第2軸」で示すことから始まる。今回の例では「7月」と「8月」のデータを別の系列にすることで、これを実現する。「7月」と「8月」の数値データを選択し、「緑色の枠線」を下方向へドラッグする。

    「突出した数値データ」を選択して移動

すると、選択していたセル範囲が1つ下の行へ移動され、以下の図のような形になる。

    移動された数値データ

このままでは「7月」と「8月」のデータがグラフから除外されてしまうので、グラフ化するセル範囲を変更しておこう。グラフをクリックして選択し、グラフ化するセル範囲(薄い青色で示された範囲)を1つ下の行まで拡張する。

    グラフ化するセル範囲の変更

このように操作すると、7月と8月のデータが「系列2」として扱われるようになり、系列が2つある「集合縦棒」グラフに変更できる。

続いては、7月と8月のデータ(系列2)の軸を「第2軸」に変更していこう。「7月」または「8月」のグラフを右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択する。

    「データ系列の書式設定」の呼び出し

「データ系列の書式設定」が表示されるので、「使用する軸」に「第2軸」を指定してから設定画面を閉じる。

    「使用する軸」を「第2軸」に変更

これで「7月」と「8月」だけを「第2軸」で示すグラフにカスタマイズできた。ただし、自動設定された「縦軸の範囲」は適切とはいえない……。

    「7月」と「8月」のデータを第2軸で示したグラフ

続いて、それぞれの「縦軸の範囲」をカスタマイズしていこう。まずは、左側にある「第1軸」の範囲を変更する。今回は、グラフの上に適当なスペースを設けられるように「最大値」を8,000に変更し、さらに単位の「主」に1,000を指定した。

    「第1軸」の数値の範囲を変更

次は「第2軸」のカスタマイズだ。こちらも目盛線の間隔が1,000になるように、単位の「主」を1,000に変更する。また、目盛線の数が「第1軸」と同じ8本になるように、「最小値」を16,000、「最大値」を24,000に調整した。

    「第2軸」の数値の範囲を変更

このように左右の軸の書式を変更すると、グラフの見た目は以下の図のように変化する。

    縦軸の範囲を調整したグラフ

「縦軸の範囲」をカスタマイズするときのポイントは、左右の軸で「目盛線」を共有できるように数値を調整すること。今回の例では、左側の「第1軸」の範囲を0~8,000に変更し、目盛線の間隔に1,000を指定した。つまり、1,000間隔で範囲を8個に分割していることになる。

右側の「第2軸」も1,000間隔で8本の目盛線を描画するには、「最大値」と「最小値」の差が8,000になるように値を指定しなければならない。さらに「7月」と「8月」のデータだけが飛び出すように範囲を調整する必要もある。

これらを上手に調整してあげると、先ほど示したグラフのようになる。今回の例では、第1軸の「最大値」を8,000に変更することでグラフの上部にスペースを設けたが、状況によっては「最大値」にもっと大きい数値を指定しなければならないケースもあるだろう。この場合は、それに合わせて「第2軸」の範囲も調整しなければならない。このあたりの調整は試行錯誤を繰り返しながら最適な範囲を求めていくことになる。

「曲線」の図形を使って波線を描画する

グラフ表示を整えられたら、次は「波線」を描画していこう。ここで第2の問題となるのが、Excelに「波線」の図形が用意されていないこと。そこで「曲線」の図形を使って波線を描画する方法を紹介しておこう。

「挿入」タブにある「図形」コマンドをクリックし、「曲線」の図形を選択する。

    「曲線」の図形を選択

続いて、マウスのクリックを繰り返して「曲線」を描画していく。このとき、「セルを区切る線の交点」を結ぶようにマウスをクリックしていくと、波線の図形を描画できる。なお、波線の形状は後ほど微調整するので、マウスをクリックする位置は大雑把でも構わない。適当な長さの波線を描画できたら「Esc」キーを押して「曲線」の描画を終了する。

    「曲線」の描画

続いて、波線の形状を微調整していこう。先ほど描画した図形を選択し、「図形の書式」タブで「図形の編集」→「頂点の編集」を選択する。

    「頂点の編集」を選択

「曲線」の頂点を移動できるようになるので、きれいな波線になるように調整していく。このとき、それぞれの頂点を「Alt」キーを押しながらドラッグすると、「セルを区切る線の交点」の真上に頂点を配置できる。

    頂点の位置を微調整

最後に、両端のカーブを調整する。左端の頂点を選択し、「白い四角形」をドラッグして「カーブを決める線」が水平になるように配置する。

    両端の頂点の処理

右端の頂点でも同様の操作を行うと、きれいな波線に仕上げられる。波線の形状を整えられたら、線の書式を指定していこう。波線の図形を選択し、「図形の書式」タブを選択する。その後、「図形のスタイル」グループにある「小さい四角形」をクリックする。

    「図形の書式設定」の呼び出し

「図形の書式設定」が表示されるので、線の「色」に「濃い目の灰色」を指定し、「幅」を太くする。

    「波線」の書式を指定

書式を指定できたら、「Ctrl」キーと「Shift」キーを押しながら「曲線」の図形を下方向へドラッグする。これで「曲線」の図形を複製できる。

    「波線の図形」を複製

次は、複製した「曲線」の書式を指定する。こちらは、線の「色」に白を指定し、「幅」を先ほどより少しだけ細くする。

    「複製した波線」の書式を指定

これで「太い灰色の波線」と「細い白色の波線」を作成できた。これら2つの図形をピッタリと重ね合わせると、(見た目上は)二重線の波線を作成できる。2つの「曲線」を同時に選択し(「Shift」キーを押しながらクリックする)、「配置」→「上揃え」で整列させる。

    2つの波線を選択して「上揃え」で整列

続いて、2つの「曲線」が選択された状態のまま「グループ化」を指定する。

    2つの波線をグループ化

このように操作を進めていくと「波線」の図形を準備できる。あとは、この波線をグラフ上に配置して、縦軸の見た目を調整するだけ。これらの作業については、次回の連載で詳しく紹介していこう。