Excelには、アイコン画像を並べて「棒グラフ」を表現する方法も用意されている。実際に利用できる場面は少ないかもしれないが、グラフの表現手法の一つとして覚えておいても損はないだろう。「棒グラフの配置に関連する書式」の理解を深める意味でも、気になる方は一度試してみるとよい。
アイコンを並べたグラフとは?
今回は、日本全国の「空き家」について調査したデータを使って操作手順を解説していこう。以下に示したデータは「一戸建」と「共同住宅」について空き家数の推移を調べたものだ。
「空き家数の推移」を調べたデータ表 出典:「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)
このデータをもとに「集合縦棒」の棒グラフを作成すると、以下の図のようになる。
「集合縦棒」のグラフを作成
このグラフをカスタマイズしていき、最終的には以下の図のようなグラフを作成するのが今回の趣旨となる。
棒グラフをアイコンで示したグラフ
棒グラフをアイコンで示す
それでは、具体的な手順を解説していこう。Microsoft Officeには、アイコン画像を手軽に利用できる機能が装備されている(※)。今回はこの機能を使って「棒グラフ」をアイコン画像で表現してみよう。
(※)Microsoft Office 365、またはMicrosoft Office 2016以降の製品に装備されている機能。
まずは「集合縦棒」などの棒グラフを作成する。続いて、いずれかの棒グラフ(データ系列)を右クリックし、「塗りつぶし」コマンドから「図」を選択する。
データ系列の「塗りつぶし」の変更
すると、以下のような画面が表示される。アイコン画像を利用するときは、ここで「アイコンから」を選択すればよい。
「アイコンから」を選択
利用可能なアイコンが一覧表示されるので、好きなアイコンを選択し、「挿入」ボタンをクリックする。このとき、「キーワード検索」や「カテゴリ選択」を活用してアイコンを探し出すことも可能だ。
アイコンの選択
右クリックした棒グラフ(データ系列)の表示がアイコンに変化する。ただし、数値データにあわせて「縦長に伸長されたアイコン」が表示されるため、このままでは使えない。アイコン表示された棒グラフを右クリックし、「データ系列の書式設定」を呼び出す。
「データ系列の書式設定」の呼び出し
「データ系列の書式設定」が表示されたら「塗りつぶしと線」(インクをこぼしたアイコン)を選択し、「塗りつぶし」のカテゴリを展開すると、以下の図のような設定画面が表示される。アイコン画像を繰り返して配置するには、ここで「拡大縮小と積み重ね」を選択すればよい。
続いて、「単位/図」の設定項目に「1つのアイコンに相当する数値」を指定し、各アイコンの高さ調整する。例えば、「単位/図」に50を指定すると、1つのアイコンで「数値データの50」を示すようにグラフ表示を調整できる。
「拡大縮小と積み重ね」の指定
同様の手順で「共同住宅」の棒グラフもアイコンで表現すると、以下の図のようなグラフにカスタマイズできる。
「共同住宅」の系列もアイコンで示したグラフ
以上が、「棒グラフ」をアイコンで表現するときの基本的な操作手順となる。ただし、この方法では「黒色のアイコン」しか使えないことに注意しなければならない。色を付けたアイコンでグラフを表現するには、以降に示す方法で棒グラフの「塗りつぶし」を指定する必要がある。
着色したアイコンで棒グラフを表現するには?
黒色ではなく、「好きな色のアイコン」で棒グラフを表現したい場合は、次の手順でグラフをカスタマイズする。
まずは、ワークシートに「アイコン」を挿入する。適当なセルを選択し、「挿入」タブにある「アイコン」コマンドをクリックする。
ワークシートにアイコンを挿入する操作
アイコンの一覧が表示されるので、グラフに利用するアイコンを選択し、「挿入」ボタンをクリックする。
挿入するアイコンの選択
これでワークシートにアイコン画像を挿入できる。このアイコン画像をクリックして選択し、「グラフィック形式」タブにある「グラフィックの塗りつぶし」コマンドを操作すると、アイコン画像を好きな色に変更できる。なお、一覧に表示されていない色を指定するときは「塗りつぶしの色」を選択して色を指定すればよい。
「グラフィックの塗りつぶし」で色を指定
アイコン画像の色を指定できたら、このアイコン画像をクリックして選択し、「Ctrl」+「C」キーでコピーする。続いて、このアイコン画像で表現する棒グラフ(データ系列)を右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択する。
「データ系列の書式設定」の呼び出し
棒グラフの図柄を「コピーしたアイコン画像」に変更するときは、「塗りつぶし(図またはテクスチャ)を選択し、「クリップボード」ボタンをクリックすればよい。その後、「拡大縮小と積み重ね」を指定し、アイコンのサイズ(高さ)を調整する。
クリップボードにコピーしたアイコンの指定
同様の手順で「共同住宅」の系列もアイコン画像で表現するように指定すると、以下の図のようなグラフに仕上げることができる。
「共同住宅」の系列にも「色付きアイコン」を指定したグラフ
なお、ワークシートに挿入したアイコン画像は、グラフをカスタマイズするために一時的に利用するものなので、作業が完了したら「Delete」キーで削除してもかまわない。
アイコンの縦横の比率を調整するには?
前述したように、各アイコンの高さは「拡大縮小と積み重ね」の数値を変更することで調整できる。続いては、各アイコンの幅を調整する方法を紹介しておこう。
いずれかのデータ系列(アイコンで表現された棒グラフ)を右クリックし、「データ系列の書式設定」を開く。この設定画面で「要素の間隔」を調整すると、それに応じて「アイコンの幅」も変化するようになる。
「要素の間隔」の変更
たとえば、「要素の間隔」を50%に変更すると、グラフ同士の間隔が狭くなり、そのぶん「各アイコンの幅」が大きくなる。つまり、横長のアイコン表示に変化するわけだ。
「要素の間隔」を50%に変更した例
また、「系列の重なり」の設定項目も「各アイコンの幅」に影響を与える。今回の例の場合、この設定項目は「一戸建」と「集合住宅」の間隔を調整する書式となる。
「系列の重なり」の変更
これら2つの設定項目の数値を変更して全体的なバランスを整える。以下の図は、「系列の重なり」に0%を指定し、「要素の間隔」に170%を指定した場合の例だ。
「アイコンの幅」と「間隔」を調整したグラフ
ここまでの作業が完了すれば、あとは「グラフ全体をどうデザインしていくか?」という作業になるが、その前に一つ注意しておきたい点がある。それは「凡例」に表示されているアイコン(マーカー)が小さすぎて、その図柄を視認できないことだ。
「凡例」の文字の書式を変更すれば(文字サイズを大きくすれば)、それに応じてアイコン(マーカー)の表示も大きくなるが、それでも図柄を視認しにくいことに変わりはない。
「凡例」の文字の書式を調整した例
そればかりか、「凡例」の文字が大きすぎて全体のバランスを整えられない、という問題が発生してしまう。そこで次回は、「凡例」のマーカー部分だけを大きく表示するテクニックを紹介していこう。「アイコンで表現した棒グラフ」ではない、一般的なグラフにも使えるテクニックなので、こちらも覚えておくとよいだろう。